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エッチング加工(フォトエッチング加工)について

リードフレームの製造などに広く利用され、薄板の金属加工・薄板金属の精密加工方法として非常に有用なエッチング加工(フォトエッチング加工)技術についてご説明しております。

板金加工eyeでは、要求品質や製品に応じて最適な加工方法を採用していますが、精密板バネや薄板メッシュ・高い寸法精度が要求される多孔板、レーザー加工では寸法精度が不足するような製品、反り・ひずみ・たわみなど材料変形を嫌うような部品のブランク加工などにエッチング(フォトエッチング)を採用して薄板金属の精密加工をお請けしております。

薄板金属のフォトレジストエッチングによる精密加工サンプル


■ エッチングとは、フォトエッチング加工とは

エッチングとは、一般にエッチング液などの化学薬品による化学反応・腐食作用を応用して被加工物を食刻(溶解加工・化学切削)する加工方法です。
目的の加工形状にマスキング(塗装処理時のマスキングと同様、表面の部分的に被覆保護すること)による防食処理を施したうで、エッチング液などの腐食剤によって不要部分を除去することで所望の形状を得ます。
各種鋼材やステンレス、銅や真鍮などの伸銅品などの金属加工に用いられることが多いですが、基本的に腐食性のあるものであればさまざまな素材の加工・表面加工に応用することができ、身近なものでは、ガラスの装飾技法・ガラス工芸として利用されるガラスエッチングなどがあります。

フォトエッチング加工とは、上述のようなエッチング加工技術に、フォト(photo)、つまり精密な写真技術・精密画像技術をマッチさせた精密加工技術であり、エッチング液による腐食加工(化学切削)から材料表面を保護するマスクとして、一般にレジスト(フォトレジスト・エッチングレジスト)が用いられることから、フォトレジストエッチング加工とも言われます。

精密写真と腐食技術の応用であるフォトエッチング加工は、エレクトロニクス製品などにおける極小部品・極薄板製品や特殊・複雑形状の製品など、金属加工における超精密な加工要求にも対応が可能な加工方法です。

フォトエッチング加工(フォトレジストエッチング加工)においては、CAD/CAMシステムにより作成されたデータを元にしてレーザプロッターから高精度の描画パターン(エッチングの原版であるフィルムマスク)を作成することにより、非常に精密な目的形状のマスク(マスキング)を施すことができます。
こうして得られる非常に高精度のエッチングパターンに対してエッチング液により腐食加工を施すことにより、極小品・極薄板品、そして任意形状・複雑形状の精密金属加工が可能となります。


■ エッチング加工(フォトエッチング加工)の特徴

フォトエッチング技術では、以下のような優れた利点・特徴があります。

材料の変形(バリ・カエリ・ひずみ・たわみ等)の心配がない
フォトエッチングは非接触加工(化学反応・腐食による溶解加工)であるため、金型によるプレス加工(プレス打抜き加工)に懸念されるようなバリ・カエリ・ひずみ・たわみなどが原理的に発生しません。
材料が薄板であるほど高精度な加工が可能
フォトエッチングは化学的な腐食を加工のベースとしていることから、加工を施す素材材料の厚さ(板厚)が薄ければ薄いほどシャープで高精度な加工ができ、薄板金属の精密加工に適しています。
超精密・高密度・複雑・微細加工が可能
エッチングパターン(原版)は、CAD/CAMデータとレーザープロッタを用いた精密写真技術によるフィルムマスクにより作成されるため、微細で複雑な形状や微細貫通加工を高密度で行うことができます。
任意形状の加工が可能
数値化されたCADデータでなくとも写真画像として取り込めるものがあればエッチングパターンを作成できるので、任意形状の加工ができます。
例えば、フリーハンドで描いたデザインスケッチ画などもスキャニングにより画像として取り込むことにより、そのままの形状を再現できます。
高価な金型・治具等が不要
プレス加工では汎用金型では対応できない特殊・複雑形状のプレス抜きの場合は金型作成が必要になり、金型代が非常に高価になりますが、フォトエッチングではフィルムマスクを原版に使用します。フィルムマスクは一般的な金型と比べても安価であるうえに、短時間に作成することができます。
また、プレス加工における金型に相当するフィルムマスクは、変更も容易でスピーディーな対応が可能なことから試作品などの小ロット品をプレス加工よりも短納期で提供できます。
複雑な穴形状、溝加工・凹凸加工が可能で深さ調整もできる
エッチングの最大の特徴の一つであるハーフエッチング(※)を行うことにより、板厚の半分だけを残して腐食加工するような凹凸の加工や溝加工を行うこともできます。腐食の度合いを制御することにより凹凸の深さを調節することも可能です。

(※)ハーフエッチング
ハーフエッチングとは、フォトエッチングにおいて、素材(金属)板の両面から同一パターン形状を化学腐食させエッチングするのではなく、意図的にそれぞれの面のエッチングバランスを制御することによって任意の形状に溶解加工したり(下図のその1:異形パターン例参照)、素材の片面(片側)だけを厚みの途中までエッチングする(下図のその2:片面エッチング加工参照)ようなエッチング加工のことです。
ハーフエッチング加工の断面イメージ図(その1:異形パターン例)
【ハーフエッチング加工の断面イメージ図(その1:異形パターン例)】
ハーフエッチング加工の断面イメージ図(その2:片面エッチング加工)
【ハーフエッチング加工の断面イメージ図(その2:片面エッチング加工)】


■ フォトエッチング加工の工程・主な装置・設備

フォトエッチングの工程

エッチングパターン(原版)の描画・作成
お客様から頂いた図面・データをCADシステムに入力し、レーザープロッタの出力により高精度のパターンフィルム原版を作成します。
原版は製品の仕上がりや寸法管理、品質を左右する要になります。
エッチングパターン(原版)のイメージ図
【エッチングパターン(原版)のイメージ図】
材料の前処理(脱脂洗浄・整面)
次工程のレジスト(フォトレジスト)の材料表面への密着をよくするために、金属板材料表面の油脂や汚れの付着を取り去る脱脂洗浄処理を行います。
金属板表面の洗浄が不完全だとフォトレジストの密着強度や品質・仕上がりにも影響を与えるため、重要な工程です。
材料の前処理(脱脂洗浄・整面)のイメージ図(断面図)
【材料の前処理(脱脂洗浄・整面)のイメージ図(断面図)】
ラミネート(フォトレジストの塗布)
フォトレジスト(レジスト)を金属板材料の両面に貼り付けます。
フォトレジストとは耐酸性のある感光剤のことで、後工程のエッチング処理から金属材料表面を保護することから”レジスト”(resist)と呼ばれています。
フォトレジストによりマスキング(保護)された部分はエッチングされません。
フォトレジスト塗布の断面イメージ図
【フォトレジスト塗布の断面イメージ図(ラミネート)】
露光
エッチングパターンフィルム原版に描画された形状を、フォトレジストによりコーティングされた金属板の表裏両面に露光して焼き付けます。
より精密なパターン(形状)を再現するためにクリーンルーム内での作業が必要とされます。
露光の断面イメージ図
【露光の断面イメージ図】
現像
エッチング原版のパターン(形状)が露光転写された金属材料に現像処理を行うことによって、バターン部のレジストが除去されて、その部分の金属板表面が露出されます。
これで次工程で行うエッチングパターンのマスキングが完成します。現像の出来映えは次のエッチングの仕上がりに大きく影響するため、非常に重要な工程となります。
現像の断面イメージ図
【現像の断面イメージ図(バターン部のレジスト除去)】
エッチング
マスキングされた金属板材料にエッチング液をつけることで、現像作業で露出された部分だけがエッチング(化学切削・腐食・溶解除去)されることによって、パターン(原版)通りの形状に金属板が加工されます。
エッチングの断面イメージ図
【エッチングの断面イメージ図(エッチング液による金属腐食・化学切削)】
レジスト剥離(はく離)
エッチング加工後に金属板表面に残っているフォトレジストによるマスキングを除去し、洗浄・乾燥します。
レジスト剥離の断面イメージ図
【残存するレジストが剥離される断面イメージ図】
製品検査
外観検査・寸法検査などの検査が行われ、製品完成となります。
製品完成の断面イメージ図
【製品完成の断面イメージ図】

各工程で使用される主な装置・設備

  • CAD/CAMシステム
  • レーザープロッター
  • 金属切断装置
  • 金属洗浄機
  • 自動現像機
  • エッチング前処理ライン
  • レジストコーター
  • ラミネーター
  • 露光・現像ライン
  • エッチャー(エッチングマシン)
  • 画像測定機
  • 投影機


■ フォトエッチング加工の標準加工精度・寸法公差

エッチング加工の最小パターン・最小開口寸法・精度などは、性質上、加工する金属素材板の厚み(板厚)に大きく左右されます。

● エッチング加工断面の形状と金属板の厚さ(板厚)に対する関係
エッチング加工ではその性質上、アンダーカット(サイドエッチング)が必ず発生し、断面形状の拡大イメージは以下のイメージ図のようになります。

(a)片面エッチング(ハーフエッチング)の場合
片面エッチング(ハーフエッチング)の場合は、サイドエッチングが大きくなり、下図のようなテーパーがつき、寸法精度は悪くなります。
サイドエッチングA寸法の大きさは、一般には、金属板の板厚tの約40%程度となります。

(a)片面エッチング(ハーフエッチング)の場合の断面形状と金属板の厚さ(板厚)に対する関係のイメージ図

(b)両面エッチングの場合
両面エッチングの場合は、板の両側からの腐食加工になるためテーパーが縮小されて、A寸法は小さくなります。
サイドエッチングA寸法の大きさは、一般には、金属板の板厚tの約10%〜20%以内となります。

(b)両面エッチングの場合の断面形状と金属板の厚さ(板厚)に対する関係のイメージ図

いずれの場合においても、サイドエッチングの大きさ(上図の寸法A)は、金属板の厚さ(板厚)に大きく依存し、板厚が薄いほどサイドエッチングは小さくなると共に、加工精度も高くなります。


● コーナーの形状・コーナー外角(r)・内角(R)の寸法
エッチング加工では、四角穴などの内角Rや、製品外形の外角rには、必ず一定以上の丸みを帯びますが、この半径R寸法も金属板の素材厚さ(板厚)に依存します。
通常は、内角(R)よりも外角(r)のほうが鋭くエッチングされます。
一般には、以下の図のように、板厚にもよりますが、内角(R)は、板厚tの80%〜120%程度、外角(r)は板厚tの40%〜80%程度となります。

コーナーの形状・コーナー外角(R)・内角(r)寸法のイメージ図


● 最小加工寸法と公差
穴の大きさ・線幅と金属板の厚み(板厚)に対する関係は、以下の図のようになります。

最小穴径(最小加工寸法)・最小線幅(最小残し幅)と金属板の板厚に対する関係のイメージ図

【最小穴径(D)・最小線幅(W)と金属板の板厚に対する関係のイメージ図】

通常は、穴径は板厚より小さくすることはできず、一般には板厚tの110%程度が最小穴径(最小加工寸法)となります。
線幅(残し幅)の最小寸法は、板厚tの50%〜100%程度となります。
また、寸法公差は、板厚tの ±10%〜15%程度となりますが、いずれの場合もその程度は板厚により若干異なり、具体的には以下の表に示すような寸法になります。

【金属板の板厚(t)に対する最小加工寸法(最小穴径)及び寸法公差】
金属板の板厚tに対する最小加工寸法(最小穴径)及び寸法公差


● ピッチ公差
ピッチ公差は、ピッチ寸法により、標準的には以下の図のようになります。

ピッチ公差
【ピッチ寸法に対するピッチ公差】


■ フォトエッチング加工 製品例

製品例1.
ステンレス薄板ばね材(SUSエッチング材) SUS304-H t0.35(t0.3) の薄板金属精密加工実例。ハーフエッチング加工による板厚t0.35のステンレス薄板バネ材を、板厚方向にt0.05深さ凹加工したSUSリングの薄板金属加工の試作品。


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