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C5191P-りん青銅板、C5210P-ばね用りん青銅板の板金加工実例

板金加工分野においてはよく”PBP、PBSP(PBP・PBSPはそれぞれりん青銅板及びバネ用りん青銅板の旧JIS規格記号)”とも呼ばれ、薄板ばねやスイッチ部品などによく用いられる、C5191PやC5210Pに代表されるリン青銅板及びバネ用リン青銅板による薄板精密板金・板金加工の製品実例をご紹介しております。

加工サンプル内容の詳細をご覧いただき、お見積もりやご注文の際の参考にしてください。

りん青銅板の種類や規格などに関することも簡単に解説しておりますので、こちらも設計などの参考になれば幸いです。

C5191P(りん青銅板)、C5210P(ばね用りん青銅板)


■ サンプル1

りん青銅板 C5191P t0.3(金めっき)の精密板金実例。企業様向け。小物・薄板の曲げ加工・カール加工成形部品。


■ サンプル2

りん青銅板 C5191P t3.0の精密板金・機械加工実例。エンドミルによる座ぐり部機械加工とワイヤー加工によるスリット部の加工など。企業様向け試作部品。


■ サンプル3

リン青銅板 C5191P t0.3の小物・薄板精密板金サンプル。企業様向けセンサーの試作部品。先端をフック形状にカール曲げ加工(R曲げ加工)。


■ サンプル4

りん青銅板 C5191P t0.4の薄板精密板金(板バネ加工)サンプル。少量製作の部品押さえ用(固定用)。両端を鈍角に曲げ加工することにより板バネとして利用。


■ サンプル5

リン青銅板 C5191P t0.25の薄板精密板金加工サンプル。平滑度計用水銀柱部品に利用される絞り板(絞り穴付き薄板円板)。細穴はドリル加工。


■ サンプル6

リン青銅板 C5191P t0.5の薄板精密板金・板バネ加工サンプル。ばね性を生かし機械装置内で試料の両側を押さえるための門型の板バネ金具。


■ りん青銅板・ばね用りん青銅板の種類や規格、サイズ、機械的性質など

リン青銅板・バネ用リン青銅板の種類
りん青銅板及びばね用りん青銅板とは、伸銅品の一種であり、りん青銅を圧延した板材のことです。
りん青銅とは、銅合金(※1.)の一種であり、銅(元素記号:Cu)を主成分とするスズ(元素記号:Sn)との銅合金である青銅(せいどう:英文では”bronze”、ブロンズ、砲金ともいう)に分類される銅合金です。

(※1.)
銅合金とは、銅を主成分とし、それに合金元素(ある特性を付与する目的で母金属に添加され、又は包含される金属、又は非金属元素)を添加した合金のことをいい、黄銅(銅と亜鉛の銅合金)のほか、青銅(銅とすずの銅合金)、白銅(銅とニッケルの銅合金)、赤銅(銅と金の銅合金)、洋白(銅と亜鉛とニッケルの銅合金)などがあります。

リン青銅板は、銅Cuを主成分として、すず(Sn)3.5〜9.0%、りん(P)0.03〜0.35% を含む銅合金であり、添加するすず(Sn)及びリン(P)の成分量の多い少ないによっていくつか種類があり、以下のリン青銅板があります。

りん青銅板の種類(JIS記号)

C5050P りん青銅板
化学成分(質量%):
Cu+Sn+P 99.5以上/Pb 0.02以下/Fe 0.10以下/Sn 1.0〜1.7/Zn 0.20以下/P 0.15以下
C5071P りん青銅板
化学成分(質量%):
Cu+Sn+Ni+P 99.5以上/Pb 0.02以下/Fe 0.10以下/Sn 1.7〜2.3/Zn 0.20以下/Ni 0.10〜0.40/P 0.15以下
C5111P りん青銅板
化学成分(質量%):
Cu+Sn+P 99.5以上/Pb 0.02以下/Fe 0.10以下/Sn 3.5〜4.5/Zn 0.20以下/P 0.03〜0.35
C5102P りん青銅板
化学成分(質量%):
Cu+Sn+P 99.5以上/Pb 0.02以下/Fe 0.10以下/Sn 4.5〜5.5/Zn 0.20以下/P 0.03〜0.35
C5191P りん青銅板
りん青銅板2種(旧JIS記号:PBP2)/比重(密度)8.89
化学成分(質量%):
Cu+Sn+P 99.5以上/Pb 0.02以下/Fe 0.10以下/Sn 5.5〜7.0/Zn 0.20以下/P 0.03〜0.35
色合いは下図のように、銅板(純銅板)に近い色調を示す。
C5191P りん青銅板の色調サンプル
【C5191P りん青銅板の色調サンプル】
C5212P りん青銅板
化学成分(質量%):
Cu+Sn+P 99.5以上/Pb 0.02以下/Fe 0.10以下/Sn 7.0〜9.0/Zn 0.20以下/P 0.03〜0.35

特によく使用される C5191P
これらのりん青銅板のうち、板金加工用板材・薄板ばね材として広く用いられるのが、C5191P リン青銅板 であり、市中品で主に小板サイズの板素材として最も広く流通しています。
板金加工eyeにおけるりん青銅板製品も、特別な要求・仕様などがない限り、通常はこの C5191P を使用しています。

りん青銅板の特性・用途など
上記の各種りん青銅板は、一般に展延性・耐疲労性・耐食性が良好であるほか、高強度、曲げ・絞り加工性が良い、耐摩耗性が良い、非磁性体、めっき・はんだ付が容易、化学的腐食に強いなどの特性をもつ銅合金です。
C5050P 及び C5071P の低すずリン青銅板は、導電性・熱伝導性に優れています。
C5191P 及び C5212P は、特にバネ性に優れており、ばね材に適しています。
りん青銅板の主な用途例としては、電子、電気機器用ばね、スイッチ、リードフレーム、リード端子、トランジスタ端子、コネクタ、ダイヤフラム、ベロー、各種リレー接片、ヒューズグリップ、しゅう動片軸受、ブッシュ、クラッチ板、ブレード材、各種スプリング片、打楽器などが挙げられます。

C5210P ばね用りん青銅板
りん青銅板(特に C5191P)と同じような用途・目的で使用される伸銅品には、以下のC5210P(バネ用リン青銅板)があります。

C5210P ばね用りん青銅板
ばね用りん青銅板(旧JIS記号:PBSP)/比重(密度)8.89
化学成分(質量%):
Cu+Sn+P 99.7以上/Pb 0.02以下/Fe 0.10以下/Sn 7.0〜9.0/Zn 0.20以下/P 0.03〜0.35
バネ用材料として、バネ限界値(※)が規定されている すず(Sn)7.0〜9.0%を含み、上記の化学成分値からなるリン青銅。
りん青銅板(C5191P)と同様、展延性・耐疲労性・耐食性が良好であるほか、高強度、曲げ・絞り加工性が良い、耐摩耗性が良い、非磁性体、めっき・はんだ付が容易、化学的腐食に強いなどの特性をもつ銅合金。
特に低温焼なましを施してあるので、高性能バネ材に適し、りん青銅板(C5191P)よりもさらに高性能のばね性が要求されるものに用いられる。
質別SH は、ほとんど曲げ加工を施さない板バネに用いられる。
電子・通信・情報・電気・計測機器用のスイッチ、コネクター、リレーなど。
色合いは下図のように、りん青銅板(C5191P)と同様の色調を示す。
C5210P ばね用りん青銅板の色調サンプル
【C5210P バネ用リン青銅板の色調サンプル】
(※)
ばね限界値とは、材料に曲げる力を与えたとき、所定の永久たわみ(例えば 0.075mm又は0.1mm)を生じたときの表面最大応力値(永久たわみを生じない最大応力を与えたとき、材料の最外表層に生じる応力値)のこと。
伸銅品のJISでは、JIS H 3130 に、繰返したわみ試験とモーメント式試験の2通りの試験方法が規定されている。

バネ材の曲げ加工
ばね材は冷間圧延によって製造されるので方向性(異方性)が高い薄板であるため、曲げ加工の際には注意が必要です。
C5210P(バネ用リン青銅板)など、特にバネ性の強いものほど圧延率が高いために異方性が強くなります。

一般に、強度(引張強さ、ばね限界値、降伏点、弾性率など)は、圧延方向に直角な方向が強く、平行な方向が最も弱くなり、伸びについてはその逆の傾向となります。

そのため、バネ材の曲げ加工は、一般に曲げ軸が圧延方向に直角あるいは45°方向くらいまでに収まるような材料取りをすることが望ましいです。(下図参照)
ばね材の曲げ加工における圧延方向の取り方
【バネ材の曲げ加工における圧延方向の取り方】

さらに、一般に強度の高いバネ材ほど靭性(じん性)が乏しくなり、スプリングバック(※)が大きくなるので、曲げ加工の難易度が高くなります。

(※)スプリングバック
スプリングバックとは、素材に弾性があるため、曲げ加工など所定の形に成形しても加工終了後加圧力を開放した時に、はね返りにより曲げた角度よりも開いてわずかに加工前の形状に戻ってしまう現象をいいます。
スプリングバック量は材質や曲げ、絞りの量に左右されます。
SUSバネ材などスプリングバックの強い材料の曲げ加工を行う際は、スプリングバックによる曲げ角度の戻り量を考慮した深い曲げ角度の加圧力を加えなければならいので、寸法精度が出にくい難しい加工になります。

C5191P 及び C5210P の定尺サイズ・寸法
C5191P(りん青銅板)と C5210P(ばね用りん青銅板)には、一般に以下の定尺板があります。市中に流通している定尺板サイズとしては、以下のサイズの小板(コイタ)が主流で、薄板ばね材料・精密板金用素材として利用されています。

C5191P(りん青銅板)及び C5210P(ばね用りん青銅板)の定尺サイズ
・180mm×1200mm:通称「小板(コイタ)」(※)

(※)同じ伸銅品でも銅板真鍮板の幅寸法は 365mm が一般的です。

C5191P 及び C5210P の定尺板サイズ表(標準板厚寸法及び寸法公差、重量)
一般的に流通する C5191P 及び C5210P の定尺板(小板)の、標準板厚寸法及び板厚寸法公差と各板厚における1枚当たりの重量は、以下の表1及び表2の通りです。
なお、C5191P 及び C5210P の比重は、8.89 となります。

表1.C5191P りん青銅板 180×1200小板サイズ表(標準板厚及び寸法公差、重量)
pdfファイル 表1.C5191P りん青銅板 180×1200小板サイズ表(標準板厚及び寸法公差、重量)(PDFファイル版)

表2.C5210P ばね用りん青銅板 180×1200小板サイズ表(標準板厚及び寸法公差、重量)
pdfファイル 表2.C5210P ばね用りん青銅板 180×1200小板サイズ表(標準板厚及び寸法公差、重量)(PDFファイル版)

※通常、板金加工eyeで板金用・薄板ばね用として使用する C5191P 及び C5210P の板厚はt2.0までとなります。
(t2.0までの板厚を全て在庫している訳ではありません。)

C5191P の機械的性質(引張強さ・伸び・曲げ・硬さ)
C5191P(りん青銅板)の機械的性質を、以下の表3にまとめます。(JIS H 3110 より抜粋)

表3.C5191P リン青銅板の機械的性質(引張強さ・伸び・曲げ・硬さ:JIS H 3110)
pdfファイル 表3.C5191P りん青銅板の機械的性質(引張強さ・伸び・曲げ・硬さ:JIS H 3110)(PDFファイル版)

C5210P の機械的性質(引張強さ・伸び・曲げ・ばね限界値・硬さ)
C5210P(ばね用りん青銅板)の機械的性質を、以下の表4にまとめます。C5210P には バネ限界値が規定されています。(JIS H 3130 より抜粋)

表4.C5210P バネ用リン青銅板の機械的性質(引張強さ・伸び・曲げ・バネ限界値・硬さ:JIS H 3130)
pdfファイル 表4.C5210P ばね用りん青銅板の機械的性質(引張強さ・伸び・曲げ・ばね限界値・硬さ:JIS H 3130)(PDFファイル版)

注(1)
曲げ試験の条件を示す。Wは W曲げ試験を表す。曲げ試験は、注文者の要求のあるものに限り適用し、曲げ試験によって曲げた部分の外側に割れを生じてはならない。ただし、端部の割れは判定の対象とはしない。180°曲げ又はW曲げのいずれかを適用するかは、受渡当事者間の協定による。
注(2)
最小試験力は、1.961N とする。

りん青銅板(C5191Pなど)のJIS規格
精密板金・薄板ばね用としても代表的な C5191P をはじめとするリン青銅板について規定しているJIS規格には、以下の規格があります。

JIS H 3110 りん青銅及び洋白の板並びに条
(Phosphor bronze and nickel silver sheets, plates and strips)
圧延したりん青銅及び洋白の板並びに条について。
りん青銅及び洋白の種類・記号、化学成分、機械的性質、寸法及びその許容差、各種試験、検査など。

なお、りん青銅板のJIS規格は、以前は 『JIS H 3731 りん青銅板及び条』 というJISがありましたが、この規格は1977年をもって廃止されています。
この旧JISでは、板金用に用いられる C5191P は、「りん青銅板2種(記号:PBP2)」と定義されていました。

上記の JIS H 3110(りん青銅及び洋白の板並びに条)では、りん青銅板(C5050P・C5071P・C5111P・C5102P・C5191P・C5212P)のほか、以下に示すの洋白板が規定されています。

洋白板(記号:C7351P、C7451P、C7521P、C7541P)
光沢が美しく、展延性・耐疲労性・耐食性がよい。
合金番号C7351及びC7521は、絞り性に富む。
水晶発振子ケース、トランジスタキャップ、ボリウム用しゅう動片、時計文字板・がわ、装飾品、洋食器、医療機器、建築用、管楽器など。

ばね用りん青銅板(C5210P)のJIS規格
精密板金・高性能薄板バネ用として利用される C5210P バネ用リン青銅板について規定しているJIS規格には、以下の規格があります。

JIS H 3130 ばね用ベリリウム銅,チタン銅,りん青銅,ニッケル−すず銅及び洋白の板並びに条
(Copper beryllium alloy, copper titanium alloy, Phosphor bronze and nickel silver sheets, plates and strips for springs)
圧延したバネ用のベリリウム銅、チタン銅、りん青銅、ニッケル-すず銅及び洋白の板並びに条について。
種類・記号、化学成分、機械的性質、寸法及びその許容差、製造方法、各種試験、検査など。

なお、ばね用りん青銅板のJIS規格は、以前は 『JIS H 3732 ばね用りん青銅板及び条』 というJISがありましたが、この規格は1977年をもって廃止されています。
この旧JISでは C5210P は、「記号:PBSP」と定義されていました。

上記の JIS H 3130 では、ばね用りん青銅板(C5210P)のほか、以下に示すのバネ用の板が規定されています。

ばね用ベリリウム銅板(記号:C1700P、C1720P)
耐食性がよく、時効硬化処理前には展延性に富み、時効硬化処理後は、耐疲労性・導電性が増加する。
ミルハードン材を除き、時効硬化処理は成形加工後に行う。
高性能ばね、継電器用ばね、電器機器用ばね、マイクロスイッチ、ダイヤフラム、ベロー、ヒューズクリップ、コネクタ、ソケットなど。
ばね用低ベリリウム銅板(記号:C1751P)
耐食性がよく、時効硬化処理後は、耐疲労性・導電性が増加する。
特に導電性については、純銅の半分以上の導電率をもつ。
スイッチ、リレー、電極など。
ばね用チタン銅板(記号:C1990P)
時効硬化性銅合金のミルハードン材で、展延性・耐食性・耐摩耗性・耐疲労性がよく、特に応力緩和性・耐熱性に優れた高性能ばね材である。
電子・通信・情報・電機・計測器などのスイッチ、コネクタ、ジャック、リレーなど。
ばね用ニッケル-すず銅板(記号:C7270P)
耐熱性・耐食性がよく、時効硬化処理前には展延性に富み、時効硬化処理後は応力緩和特性・耐疲労性・導電性が向上し、高性能ばね材に適する。
ミルハードン材を除き、時効硬化処理は成形加工後に行う。
電子・通信・情報・電気・計測機器用の端子、コネクタ、ソケット、スイッチ、リレー、ブラシなど。
ばね用洋白板(記号:C7701P)
光沢が美しく、展延性・耐疲労性・耐食性がよい。
特に低温焼なましを施してあるので、高性能ばね材に適する。
質別SHは、ほとんど曲げ加工を施さない板バネに用いる。
電子・通信・情報・電気・計測機器用のスイッチ、コネクタ、リレーなど。
備考:
ミルハードン材とは、製造業者側で適切な冷間加工及び時効硬化処理を施し、規定された機械的性質を付与したものをいう。



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